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なお、優生保護法施行規則は、昭和27年厚生省令第32号により全部改正されたが、改正の前後で1条の定める優生手術の術式に変更はない。

(2) 厚生事務次官は、昭和28年6月12日、「優生保護法の施行について」と題する通知(同日厚生省発衛第150号。以下「昭和28年次官通知」という。)を各都道府県知事宛てに発出した。昭和28年次官通知には、審査を要件とする優生手術について、本人の意見に反しても行うことができるものである旨、この場合に許される強制の方法は、手術に当たって必要な最小限度のものでなければならないので、なるべく有形力の行使は慎まなければならないが、それぞれの具体的な場合に応じては、真にやむを得ない限度において身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合があると解しても差し支えない旨等が記載されていた。

厚生省公衆衛生局庶務課長は、昭和29年12月24日、「審査を要件とする優生手術の実施の推進について」と題する通知(同日衛庶第119号)を各都道府県衛生部長宛てに発出した。同通知には、審査を要件とする優生手術について、当該年度における11月までの実施状況をみると、以前に提出願った実施計画を相当に下回る現状にあるので、なお一層の努力をいただき計画どおり実施するように願いたい旨が記載されていた。また、同局精神衛生課長は、昭和32年4月27日、各都道府県衛生主管部(局)長に宛てて、例年、優生手術の実施件数が予算上の件数を下回っている実情であり、当該年度における優生手術の実施についてその実をあげられるようお願いする旨を通知した。

(3)ア 被上告人Xは、昭和7年生まれの男性であり、出生時から両耳が聞こえなかった。aは、同年生まれの女性であり、3歳の頃、病気のために聴力を失った。被上告人Xとaは、昭和35年5月に結婚式を挙げ、昭和36年12月に婚姻の届出をした。

aは、昭和35年7月又は同年8月頃に妊娠したことが判明したところ、その日