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う。)においても、除斥期間の起算点が論点になるが、そこで争点になったのは、家屋の新築時における再建築費評点数の算出の誤りに起因して固定資産税等が過大に評価された場合、新築時における誤った評価に基づく価格決定の時点(当該事案では昭和58年)からその後の年度における固定資産税等賦課決定を含めて除斥期間が進行すると解するか(原審の立場)、それとも、各年度の固定資産税等の納付通知書が交付された時点を起算点として、それぞれ別個に除斥期間を計算するか(最高裁の立場)であった。したがって、固定資産税等賦課決定事件最高裁判決は、改正前民法724条後段の期間を除斥期間と解するか、消滅時効と解するかと 関わるものではなく、固定資産税等が過大に評価され、その誤りに基づく固定資産税等の過大評価が長期にわたり継続した場合における期間計算の起算点についての判例として、同条後段は消滅時効を定めるものと解したとしても、それにより影響を受けるものではなく、先例としての意義を失わないと考えられるため、判例変更の必要はないと思われる。

さらに、改正前民法724条後段の規定の適用が問題になる事案は、ごく僅かにとどまると思われること(この点は、平成21年判決における田原睦夫裁判官の意見でも指摘されている。)、同条後段は既に改正され、改正後民法724条2号は消滅時効を定めるものとなっていること、既に判決が確定済みの民事事件について は、それを是正する制度は存在せず、本件において改正前民法724条後段は消滅時効を定めたものとする判例変更を行ったとしても、確定判決に法的影響が及ぶわけではないこと、本件における判例変更は同条後段のみを射程とするものであり、これまで除斥期間を定めたものと解されてきた他の規定を射程とするものではないことに照らせば、法的安定性への配慮は必要であるものの、同条後段は消滅時効を定めたものとする判例変更を行ったとしても、それによる混乱を懸念するには及ばないように思われる。

(裁判長裁判官 戸倉三郎 裁判官 深山卓也 裁判官 三浦 守 裁判官