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行ハサルニ因リテ消滅ス」とされていたところ、取引上の各種債権について特別の短期消滅時効とすることを念頭において債権の消滅時効期間が10年に短縮されたのであり、施行時の民法167条1項は、「債権ハ十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス」と規定していたが、実質的には取引上の債権について原則的時効期間を半減したものとみることができる。不法行為の場合には、加害者が長期間判明しないことが必ずしも稀でないことに鑑みると、改正前民法724条後段が、一般債権と比べて長期の消滅時効期間を定めたことには合理性があったと考えられる。このような改正前民法724条の沿革に照らせば、同条後段がむしろ原則的な時効期間であり、同条前段は、被害者が損害及び加害者を知った場合における特則として短期消滅時効を定めたものとする説明すら可能なように思われる。

第3に、文理解釈としても、改正前民法724条後段の「同様とする」は同条前段の「消滅する」のみを指すと解釈するより、「時効によって消滅する」を指すと解釈するほうが自然なように思われる。なお、民法典の口語化前は、「同様とする」の部分は「亦同シ」という文言であったが、これについても、同条前段の「時 効ニ因リテ消滅ス」を指すと解釈するほうが自然なことに変わりはない。法務省民事局参事官室「民法現代語化案補足説明」(平成16年8月)によれば、「確立された判例・通説の解釈で条文の文言に明示的に示されていないもの等を規定に盛り込む」こととされたところ、不法行為法研究会・日本不法行為法リステイトメントでは、改正前民法724条後段に相当する規定について、時効ではなく除斥期間を定めたものであることを明らかにする文言に改正することが提言されたが、この提言は容れられず、「亦同シ」を「同様とする」と口語化するにとどまり、また、平成16年の民法改正で付された条文の見出しも、同条について、「不法行為による損害賠償請求権の時効及び除斥期間」ではなく、「不法行為による損害賠償請求権の期間の制限」とされたことに照らすと、同改正において、平成元年判決がとった除斥期間説が確認されたとはいえないように思われる。