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他方、改正前民法724条後段の期間を除斥期間と解する点については、多数意見と意見を異にし、最高裁平成20年(受)第804号同21年4月28日第三小法廷判決・民集63巻4号853頁(以下「平成21年判決」という。)の田原睦夫裁判官の意見と同様、同条後段は消滅時効を定めるものと考えるので、以下、その理由を述べる。

2 第1に、平成元年判決は、改正前民法724条前段及び同条後段のいずれにおいても時効を規定していると解することは、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図する同条の趣旨にそぐわないと述べているが、同条後段が時効を定めたものと解しても、被害者が損害及び加害者を認識していなくても不法行為の時か ら時効期間が進行するため、同条後段は同条前段とは別の意味で法律関係の早期確定に資するので、平成元年判決の上記論拠は薄弱と思われる。この点は、最高裁平成5年(オ)第708号同10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁(以下「平成10年判決」という。)の河合伸一裁判官の意見及び反対意見で指摘されていたところであり、平成29年法律第44号(以下「民法改正法」という。)による改正後の民法(以下「改正後民法」という。)724条2号が消滅時効を定めるものとされたことによって、より明確になったと思われる。なお、不法行為債権の消滅時効について短期時効と長期時効を定める立法例は、ドイツ法を始めとして、比較法的にも稀ではない。

第2に、改正前民法724条後段が、その制定時に最も参考にされたドイツ民法第1草案、第2草案及びそれに影響を与えたプロイセン普通州法の系譜を引くものであり、我が国の法典調査会における議論に照らしても、同条後段が消滅時効を定めたものとするのが立法者意思であることには疑いがない。改正前民法724条後段の20年の期間が長期であることは、除斥期間であるからではなく、改正前民法167条の基になった民法典原案168条の20年の消滅時効期間に対応するものであった。その後、民法修正案167条では「所有権以外ノ財産権ハ二十年間之ヲ