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いうべきである。そうすると、本件請求権は、同条後段の除斥期間の経過により消滅したとはいえない。

5 これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、上告理由及びその余の上告受理申立て理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、損害額等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官三浦守、同草野耕一の各補足意見、裁判官宇賀克也の意見がある。

裁判官三浦守の補足意見は、次のとおりである。

判例を変更すべき範囲等に関する私の意見については、最高裁令和5年(受)第1319号同6年7月3日大法廷判決における私の補足意見で述べたとおりである。

裁判官草野耕一の補足意見は、次のとおりである。

私は多数意見の結論及び理由の全てに賛成するものであるが、多数意見が、上告人らの本件請求権の行使に対して被上告人が除斥期間の主張をすることは信義則に反し、権利の濫用として許されない旨述べている点については、それ自体として十分に説得的であるとは思うものの、改正前民法724条の立法趣旨について考察を 深めることによって一層説得的なものになると考える。そう考える理由は、最高裁令和5年(受)第1319号同6年7月3日大法廷判決における私の補足意見で述べたとおりである。

裁判官宇賀克也の意見は、次のとおりである。

私は、本件規定が憲法13条及び14条1項の規定に違反すると解する点、改正前民法724条後段について、期間の経過により請求権が消滅したと判断するには当事者の主張がなければならないと解すべきであり、また、その主張が信義則に反し又は権利濫用として許されない場合があり、本件はまさにかかる場合に当たるとする点については、多数意見に賛成であるが、同条後段の期間を除斥期間と解する