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 次に特に日本人の立場よりして主張すべきは、黃白人の差別的待遇の撤廢なり。かの合衆國を初め英國殖民地たる濠洲、加奈陀等が白人に對して門戶を開放しながら、日本人初め一般黃人を劣等視して之を排斥しつゝあるは、今更事新らしく喋々する迄もなく、我國民の夙に憤慨しつゝある所なり。黃人と見れば凡ての職業に就くを妨害し、家屋耕地の貸付をなさゞるのみならず、甚しきはホテルに一夜の宿を求むるにも白人の保證人を要する所ありと言ふに至りては、人道上由々しき問題にして、假令黃人ならずとも、苟も正義の士の默視すべからざる所なり。卽ち吾人は來るべき媾和會議に於て英米人をして深く其前非を悔いて傲慢無禮の態度を改めしめ、黃人に對して設くる入國制限の撤廢は勿論、黃人に對する差別的待遇を規定せる一切の法令の改正を正義人道の上より主張せざる可からず。

 想ふに、來るべき媾和會議は人類が正義人道に基く世界改造の事業に堪ふるや否やの一大試鍊なり。我國亦宜しく妄りにかの英米本位の平和主義に耳を藉す事なく、眞實の意味に於ける正義人道の本旨を體して其主張の貫徹に力むる所あらんか、正義の勇士として人類史上永へに其光榮を謳はれむ。(大正七年十一月六日夜誌す)