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自己の野心を神聖化したるものに外ならず。彼等の宣言演說を見るに皆曰く、世界の平和を攪亂したるものは獨逸の專制主義軍國主義なり、彼等は人道の敵なり、吾人は正義人道の爲に之を膺懲せざる可らず、卽ち今次の戰爭は專制主義軍國主義に對する民主主義人道主義の戰なり、暴力と正義の爭なり、善と惡との爭なりと。吾人と雖今次戰爭の主動原因が獨逸にありし事卽ち獨逸が平和の擾亂者なる事は之を認むるのみならず、戰爭中に於ける獨逸の行動が正義人道を無視したる暴虐殘忍の振舞多かりし事に對しては深甚の憎惡を禁ずる能はざるものにして、英米の論者が是等の暴力的行爲を罵るは誠に當然なりと思考するものなれど、彼等が平和の攪亂者を直に正義人道の敵なりとなす狡獪なる論法に對して、其の根據に於て大に不服なきを得ず、平和を攪亂したる獨逸が人道の敵なりとは歐洲戰前の狀態が人道正義より見て最善の狀態なりし事を前提として初めて言ひ得る事なり。知らず、歐洲戰前の狀態が最善の狀態にして、此狀態を破るものは人類の敵として膺懲すべしとは何人の定めたることなりや。

 吾人を以て之を見る、歐洲戰亂は已成の强國と未成の强國との爭なり、現狀維持を便利とする國と現狀破壞を便利とする國との爭なり。現狀維持を便利とする國は平和を叫び、現狀破壞