帳簿につけ上げて整理する、といふのが主なものであつた。
『ぢや、これからやりますからね』
倉庫係は、さういふと手前󠄁の一箱から手際よく開けはじめた。
『咋日あたり船󠄂がついたのかね』
『いや、これは船󠄂の都合で香港上海を廻つて來たんですよ、こんなに角がやられて……』
さういつてゐる中に蓋がはねられ、パツキングが除かれ、雜多な品物が竝べられて行つた。
それは主に機械の部分品であつた。
河上は、片ツ端から商品を睨み合せて傳票にチヱツクして行つた。
『よし、OK――、これで全󠄁部だね、ぢやあと賴んだよ』
ズボンの塵を拂ひながら、二三步かへりかけた時だつた。
『あ、一寸々々こんなとこに、も一つ』
『え、まだあつたのかい』
『もう少しで見落すことろだつた、こんなところに轉がつてましたよ』
倉庫係は、薄い四角な木箱を拾ひ出すと、塵を拂ひながら河上の前󠄁に差出した。
『何んだらう――』
思つたより輕いものだつた。河上は、それを小脇に抱えると、不審さうに傳票を初めから見直した。
(全󠄁部照合した筈だが――)
もう一度品物と引合せて見たが、送󠄁品書と品物とはぴつたり合つてゐる。するとこれだけ餘分なものが出て來たわけだ。
『豫備かな……開けてみてくれよ』
今まで壞れやすいもので、途󠄁中の破損を見越して餘分に送󠄁つて來るものもあつたのである。
しかしひどく薄い輕いもので見當がつかなかつた。
『あれツ、レコードが二枚――』
封を切つた倉庫係が珍らしさうにいつた。
『レコード? そんなもん註文󠄁した筈ないぜ――變だね――』
傳票にないレコードが、なぜ送󠄁られて來たのであらう。しかもその眞中の貼紙にはあんまり見かけない「赤い鴉」のマークがゴム印か何かでペタンと捺され、そしてその下に一方には「Ⅰ」