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ものあらんには、諸君は决して之れを容赦すべからず。靜肅なる人は此限りに非ずと雖、彼の女々しき光景を呈して、アテーナイ市をして一種笑ふべきものたらしむる人々等に對しては、諸君は寧ろ之れを貶し去るの傾向を有せることを示すべきなり。

然りと雖、不名譽問題は此に之れを措くとするも、裁判官に對して其事實を陳述し、其確信を明かにすることなく,却つて哀願して放免を得んとするが如きは一種の惡たるなり。何となれば裁判官の職務は正義の贈與を爲すに非ずして、判决を與ふるにあればなり。裁判官は又た、法律に由つて裁判することを宣誓せしと雖、自己の氣隨を以つてすることは之れを誓はざりしなり。又た裁判官も吾等も共に决して虛僞の宣誓の習慣に從ふべからず――此くの如きものには憐憫あるべからざるなり。然らば諸君、幸に余に求むるに、余の以つて不名譽となし、不敬神となし、惡となす所のものを以つてすること勿れ、殊に今やメレートスの吿發に由つて、不敬神者として、審問さるゝ時に於て然り。あゝアテーナイ人諸君、若し言說及び懇願等の力に由つて、余は諸君の誓ひたる所を打破し得たりし