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に透徹したる所にして、一言にして云はば、物界、社會、人心に關する一切の自然科學的硏究の新理想は彼れによりて意識されたりと謂ふべし。彼れは中世紀の末に起こりたる宗敎と學問とを分離せしめむとする思想を傳へて吾人が自然に具ふる道理心を用ゐて得る知識と天啓によりて得る知識とを全く區別し一は他に係るものならずとせり。

《ガリレオと其の物理的硏究法。》〔八〕上述せる如くにベーコンは近世學術の歸納的硏究法を說かむとしたりしが其の說き洩らしたる最も大なる一點は數學の必要なりき。彼れは數學を應用して一切の物理的現象を分析し以て其の起これる所以及び法則を定むる必要に著目せざりき。此の點に於いて最も善く近世物理硏究の著眼點を明らかにし得たりしは


ガリレオ、ガリレイ(Galileo Galilei 一五六四―一六四二)

なり。彼れ說いて曰はく、吾人の知識作用は先づ觀察即ち經驗を以て始まらざるべからず、而かも唯だ個々の事柄を觀察するのみにて學理的知識の形づくらるべ