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ロッツェ(Lotze 一八一七―一八八一)はヘルバルトの哲學を批評し又スピノーザ及びライブニッツより其の思想を得て自家の哲學組織を立てたる者なり。彼れに從へば、一物が他物に影響を及ぼすと云ふが如き關係は其等の物を互に獨立するものとしては說明する能はず、唯だ一切の事物を一絕對者の狀態と見ることによりてのみ其等相互の影響といふ如きことを說明するを得べし。一物に變化あれば其れが他物に影響して其處に又變化を起こすといふは其が一絕對者の狀態なるの故を以て一方に於ける變化を補ふに他方に於ける變化を以てすればなり。而して斯くの如き種々の狀態が一絕對者に存する所、是れ即ち多なるものが一體を成す所以にして吾人は其の如き多なるものの一なることを如何に考ふべきかと云はば、意識の統一を以て考ふる外に其の道なし。即ち吾人は絕對者を以て意識ある靈なる者なりと考へざるべからずと。

フェヒネル(Fechner 一八〇一―一八八七)は精神物理學(Psychophysik)を創始して近時の謂はゆる生理的心理學を開きたることに於いて記憶せらるべきものなり。されど彼れは他に頗る詩歌的趣味に富める哲學思想を懷きたり。彼れに從へば、