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說に奈何に酷似せるかは此處に贅するを須ゐず。

ショペンハウェルの厭世哲學は全く世に謂ふ文明の進行に背馳して一切歷史上の進步といふが如きものを認めず、之れをヘーゲルが理想の發達を基礎としたる樂天論に對せしむれば、ショペンハウェルの哲學は其の正反對に立つものなり。ショペンハウェルに從へば、實在の根元は理性にあらずして盲目なる、非理性なる意欲なり、歷史上の進步てふものは、彼れに取りては寧ろ意志の益〻自らを實現し行く悼むべき大迷誤に外ならず。文化と名づけらるゝものは喜ぶべきものにあらず、寧ろ悲しむべきものなり。斯くの如き近世文化の所造及び進化發達といふ思想に全然背反したるショペンハウェルの厭世哲學を引き直し、之れにヘーゲル哲學の主要なる思想を混和して厭世主義を成るべく近世の文明に和合せしめむと試みたるはハルトマンの哲學なり。


ハルトマン(Eduard von Hartmann 一八四二生)

《ハルトマンの哲學。》〔六〕ハルトマン以爲へらく、理想は唯だ其れ自身に於いては無力なるものな