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を批評的に仕立て直すに在りともいふべし。而してまづ第一に如何なる點に於いて矛盾を發見するぞといふに物がくの性質を具ふといふが如きこと、是れ吾人の須らく解釋すべき問題なり。又一物が其の性質を變じながら猶ほ其の體を保存すといふが如き亦こゝに矛盾の點を發見せざるを得ず。而して之れを解釋する道は吾人に一物と見ゆる如き物をも分折して其を多くの物にかち而して其の多くの物が相集まりて謂はゆる一物を成すとやうに見るに在り。斯かる方法を以て解釋し行けば吾人は終に單純なる一性質、每に變化することなき實在を發見せざるべからず。而して斯かる實在は空間上及び時間上のものにあらずして形而上のものなり。ヘルバルトは之れを名づけてレアール(Real)と云へり。以爲へらく、吾人の謂ふ所變化は唯だ斯かる單純なる、獨在する、而して其れ自身には變化せざる幾多のレアールを相關係せしめ見ることに起因するものなり。吾人の靈魂も亦一種のレアールに外ならず、而して其が一切の心現象は靈魂てふレアールが吾人の身體を組織する種々のレアールに對して自己を維持する所に存するものなりと。而してヘルバルトは凡べて此等の心現象を名づけて觀念Vorstellung