Page:Onishihakushizenshu04.djvu/633

このページは校正済みです

面を維持せむとしたるがヤコービ及びシュルツェも指摘したる難點を排除してカント哲學を改めむとしたるものは當時有名なりしサロモン、マイモン(Salomon Maimon 一七五四―一八〇〇猶太人)及びヤーコブ、シギスムンド、ベック(Jakobi Sigismund Beck 一七六一―一八四〇)等なり。


マイモン

はカントの謂はゆる物自體は彼れが知識論に於いて終に維持すべからざるものなりと見て之れを除去せむとせり。彼れ以爲へらく、知識の材質に就きては吾人の明らかにし得ざる所あり、別言すれば其の由來は吾人の知識の範圍內に來たるものにあらず。感性と悟性とは全く相異なるものに非ずして寧ろ其の程度に於いて相異なるものなりと。マイモンは物自體といふ觀念を除去してカント哲學を改めむとしたるが


ベック