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ける一大新時期を開きたるものにして其の哲學ばかり後來の思想を多く啓發する淵源となれりしものは近世殆んど見ざる所なり。

《カント哲學の影響及び其の不備の點。》〔四九〕カント以後の歐洲哲學は多少彼れの影響を(積極的に或は消極的に)蒙らざるもの殆んどこれなしといふを得。直ちに彼れに接し來たる獨逸哲學の大時期は即ち彼れが提起せし問題と其の問題の見方とに親密なる關係を以て開き出だされたるものなり。但しカントの說ける所に於いて吾人を滿足せしめざるもの固より少なからず、而して此等の點に於いて彼れの所說を改めむとするが先づ彼れに踵ぎて出でし新時代の思想家の目的としたる所なり。カントが說ける所の中先づ其の最も改修若しくは補足さるゝことを要する點は第一、彼れは感性及び悟性を說きながら二者の由りて出づる根本を說明せざることにあり。盖し彼れは感官的直觀に於いては時空の二形式ありといふのみにて其の二形式が何に基づき何處より來たるか、又何故に二形式のみあるかを說明せず、又悟性の槪念を言ふ時にも十二の範疇を拾ひ集めたるのみにて其の根原を說明せず。彼れが二元論は其の道德論に於いて亦其の難處を暴露せり。而して其の二元論をして