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意味するものに外ならぬがゆゑに其の如き範圍を超えて吾人の精神的現象の裡に又は其の根柢に吾人の經驗の範圍に入り來たらざる靈魂といふ實體ありといふことは固より證せらるべき限りのものにあらず。

《純理哲學的世界論の成り立たざる所以。》〔二七〕次ぎにカントは純理哲學的世界論の成り立たざる所以を論じて吾人の理性が斯かる範圍に用ゐらるゝ時には自家撞著に陷ることを示さむとせり。以爲へらく、吾人の知識が純理哲學上には正當に形づくられざることは世界論に於ける理性の觀念其の物の示す所の相反するを見ても知るべしと。彼れは之れを名づけて純理哲學的世界論に於ける矛盾(Antinomie)と云へり。カントは之れに就きて四ヶ條の矛盾を擧げて曰はく、第一、純理哲學上の世界論に於いては世界は時間に於いて其の始めを有し又空間に於いて其の際限を有すといふことが立せらるゝと共に其の反對が均しき根據を以て立せらる。第二、一切の物は單元より成れりといふことが立せらるゝと共に其の反對即ち世に單元といふべきものなく凡べての物は皆合成のものにして無窮に分割せらるべしといふことも亦同じく立せらる。第三、自然法に從へる因果の關係以外に全く自由に働く原因あり