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るものに非ずして寧ろ經驗を成り立たしむる先天的條件といふべきものなり。されば經驗上の事物の在る所此等の槪念の應用せられざることなし、何となれば、凡べて經驗上の事物は此等の槪念によりて始めて造り上げらるゝものなればなり、猶ほ吾人の感官上の直觀に於いて時空の形式に支配せられざるものなきが如し。故に此等の範疇は客觀的に遍通なる効力を有するものなり。
斯くの如く吾人の經驗を成り立たしむるに必要なる統一作用を分析して考ふれば其の中に三個の要素を發見することを得、即ち多と一と及び多を一に統ぶる作用と是れなり。次ぎに又此の統一作用は三段階を經て進むものなりといふことを得、即ち第一、直觀に於ける知覺の綜合、第二、想像に於ける再現の綜合、及び第三槪念に於ける認識の綜合、是れなり。盖し統一的作用によりて事物の成り立つ順序を見るに、先づ吾人の直觀するや其處に已に多なる事柄の綜合さるゝことなかるべからず、此の綜合なくば空間及び時間を描くこと能はざるべし。次ぎに又吾人の全き知識を成さむには曾て見たる事物を想像に浮かべて其を再現することを要す、若し全く再現することなく觀たるほどのものが直ちに心を脫し去らば一事