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て目的に合へる組織を成す、而してかく物體の諸部分がおのづから相合して美なる結構を形づくるといふことが神の存在を證するものなり、若し神なしとせば物體の運動が自ら此くの如き秩序をなすといふことは解すべからず、故に一方に於いては目的觀を排斥すべからざると共に又物體の運動を說明せむには何處までも其が直接の原因を自然の勢力に求むべきなりと。ニュートンは引力以外の前進的運動を最初物體に與へたる者は之れを神の直接の働きなりと考へざる可からずと云へりしがカントは其の前進的運動の直接の原因をも猶ほ物體其の物の關係に於いて求むべしと考へ而して彼れが之れを說かむが爲めに案出したるもの是れ即ち星雲說なり。其の論に以爲へらく、太陽及び遊星等元來凡べて混沌たる雲霧の狀態をなしゝものが自然に相團結せむとしたる結果として茲に引力以外の運動を生ずることとなり、從ひて同一の仕方によりて太陽系統のみならず一切の恒星の系統も亦形づくられたるものなりと。此の意を以てカントは若し物質をさへ與へられなば之れよりして自然に世界を成り立たしむることを得べしとまで云へるなり。此の星雲說はラプラースも亦獨立に考へ出でたる所にして