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律を設くるの優れるに如かずと。彼等の策畧其の圖に當たりて人々皆其の奸計に欺かれ而して茲に政府及び法律といふ新らしき桎梏を貧者に加へ又新らしき武器を富者に與ふることとなり、是に至りて各人の自然に有し居たる自由は沒了して財產所有權及び之れに伴ふ不平等を法律上神聖なるものとなすこととなりぬ。斯くの如くにして社會に於ける不平等の增進し來たれる段階を約言すれば、第一には法律及び財產所有權を立てゝ貧富の懸隔を生じ、第二には有司を置きて强弱の差別を生じ、第三には素と相約して有司に委ねたる權力をば變じて君主の專制權となすことによりて主人と奴隷との區別を生ずることとなれり。之れを要するに、文化の進步はかくの如く不平等の增進しまた其れに伴ふ害惡の增加し來たれる歷史に外ならずと。以上は是れルソーが描き出でたる人類墮落物語の極槪なり。

《文化の弊害、救治の策、敎育。》〔三五〕文化の害や學げて數へ難し、貧富の差別及びそれに從ひ起こる諸多の差別に生じ來たる一切の猜忌心、憎惡心及び之れより發する爭鬪、又一方には齷齪として其の欲望を充たさむことを求むると共に一方には遊惰文弱に流れゆきて外