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ヺルテールが其の銳利なる筆鋒を向け特に力を極めて攻擊したるは貴族の階級的專權と僧侶の擅にしたる敎權となりき、而して僧侶等が力を極めて彼れを迫害せむとしたりしと共に彼れも亦力を盡くして僧侶及び僧侶の說きたる敎會的基督敎を攻擊せり。されどヺルテールは決して無神論を唱へたるにはあらずして却つてこれを非としたり。其の有名なる言に曰はく「若し世に神なくば人は神を造るべし」と。彼れが神の存在をいふや其の據りどころを專ら道德の上に置き吾人は道德上の要求として神を信ぜざるべからずと考へ而して神の存在と共に靈魂の不朽を信ずることも亦社會一般の安寧に必要なることと認めたり。彼れは此くの如く宗敎の要義を以て道德につづまるものとし而して之れを根據として一つの至大至高なる存在者を敬することの外は凡べて迷信なりとして之れを攻擊するや少しも假藉する所なかりき。

ヺルテールが神の存在を說くやかくの如く主として道德上の要求を根據としたれどもまたニュートン風の世界觀に從ひて世界に目的ある活動の現はれ居ることを認めこれがまた神の存在を證することを否まず。然れどもまた之れと共に