Page:Onishihakushizenshu04.djvu/365

このページは校正済みです

代表するものによりて定むるを最も適當なる方法なりとすと。かくしてロックは英國の立憲政體を主張したり。元來人民の有する最高權は永久に其の失ふべからざるものなれば、若し行政權と立法權とが相爭ふことある時には人民は其の多數の意志に從ひて行政權に抵抗する權利を有す、革命の權は實に斯かる塲合に行はるべきものなり。

《ロック及びカムバーラントの道德說。》〔二〕ロック以爲へらく、立法權によりて法律を制定する目的及び標準は人民全體の幸福に在りと、而して此の點に於いてロックの道德說を其の國家論に結びて考ふることを得べし。されども彼れは實際全體の幸福といふことを根據として道德を說きたるにはあらず、彼れは寧ろ凡べて吾人を以て道理心を有して至善なる神の下に在るものとし而してこれより推考して、能く道德上の正不正を數學に於いての如く論證的に確立することを得べしとし、能く直覺的に道德上の規律を認め得べしとせり(彼れが道德上生得の觀念あることを否む論は決して道德上吾人の直覺し得べき規律ありとする說と相戾るべきものに非ず)、即ち彼れはホッブスに反對して道德的規律を法律に拘らずして効力あるものと見たるなり。然