このページは校正済みです
受け繼げるものに外ならず。ニュートン自らも複雜なるものを分析して單純なるものに至り、結果より推して原因に至り、又個々の原因よりして一般の原因に至り、運動よりして運動を起こす所以の勢力に論じ至るを以て其の硏究の方針となせり。斯くしてニュートンは數學的に物體の運動を考ふることを以て唯一の科學的說明と見、言を極めて中世紀哲學者の說きたる「フォルメ、スブスタンチァーレス(formae substantiales)及び「クヮリターテス、オックルテ」qualitates occultae)を排擊し、其等事物の相因又は隱微の性質といふ如きものを以ては物界の現象の起こる所以を說明するに足らずとなせり。然るにニュートンが引力といふが如きものを說けるは是れまさしく物質の相引くといふ如き不可思議なる性質を說きたるものにあらずやと疑ひたる人もあり。然れども彼れが引力を說きたるは其の自ら說明せる所を以ても明らかなるが如く、唯だ物體の運動する現象を言ひ現はせるのみにて決して其をしかする原因を引力(attractio)といふ言語にて言ひ現はせるにはあらず。物體の相近よる原因を考ふるに於いてはニュートンは一物體を離るゝに從ひて濃くなるエーテル的物質の存在を假定して說かむとせり、即ち彼れは全く