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引き離して考ふること即ち抽象作用によれり。故に抽象作用と言語とは親密なる關係を有する者なり、他の心作用は動物と雖も多少具有すと見て不可なけれども唯だ抽象作用のみは彼等の有せずして特に吾人人類の有するところなり。而して此の抽象作用によりて造り成されたる一般觀念は是れ唯だ吾人の思ひに存する一種の複雜觀念に外ならず。眞實存在する者は凡べて個々の物なり、故に吾人の觀念の發達も亦個々物に對する者を以て始まり、最初より遍通の理若しくは一般觀念といふが如きものを思ひ浮かぶるにあらず。之れを要するに、普通名詞と名づくる者は一物を示す者にもあらねば個々の物を一々に指すものにも非ず、唯だ或事物の種類を指示するものなり。而してかゝる言辭の意昧是れ即ち其の種類の本質(essence)と名づくる者なり。例へば黃金の本質は黃金といふ言辭に含有すとせられたる意味なり。此の言辭の意味を以て物の種類の分別を爲す。ロックは之れを精しくは命名上の本質(nominal essence)と云ひて實在上の本質と別かてり、以爲へらく、凡そ吾人が物の種類を別かつは其の物が實在に於いて有する本質の何たるを以てするに非ずして、唯だ假りに一名辭が意味すと見たる若干の性質の