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板または白紙(tabula rasa)に譬ふべし、之れに觀念を記するものは經驗なり。內官及び外官によりて觀念の浮かべらるゝ時にのみ心は其の內容を有す、心は絕えず思念すといふは物體の不斷に運動すといふと等しく共に確實なる根據を以て主張し得べきことにあらず。
《單純觀念、其の四種。》〔五〕吾人が感覺及び反省によりて得る原始の觀念は之れを分析して更に原始なるものとなすべからざるが故に之れを單純觀念(simple ideas)と名づく。單純觀念を大別して四種となすことを得。第一は唯だ一つの感官のみより來たるもの色、音、香、味、溫熱の感及び障礙の感等是れなり。第二は二つ以上の感官(即ち視官及び觸官)より來たるもの、廣袤、形狀、動靜等是れなり。第三は唯だ反省によりて來たるもの卽ち吾人の一切の思想及び意思のはたらきを覺知することに於ける觀念是れなり。第四は內官及び外官の二者より來たるもの、例へば快苦、存在、力、一、繼續等の觀念是れなり。此の最後のものを細說せむに、吾人は內官及び外官の何れによりても能く快樂苦痛の感を覺え、又外官によりて事物の存在するを認め內官によりて吾が心に種々の思ひの存在するを認むることによりて存在といふ觀念