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る程度と其の到達する程度との間に於ける凡べての程度を通過せざる可からず、例へば一〇の速度或は溫度より一〇〇の速度或は溫度に進む時には其の間の凡べての段階を通過すること無くして彼れより是れへ飛び昇ること能はず、如何ばかり迅速に彼れより是れに移るも必ず其の間に存する凡べての程度を經過し行かざる可からず。自然の現象は凡べて此の連續律に從ふ者にして決して飛躍を爲すこと無し。又全く運動の無き處に突然運動の生起し來たるものに非ず、運動の生ぜむには必ず先づ小なる運動ありて其れが或速力を以て增進し來たるに因らざる可からず、故に靜は動の小なるものと謂ふべきなり。一切の反對は皆相對的のもの、換言すれば、皆程度上の差別にして絕對の差別にあらず。固體は流動體が其の流動の狀態を少なくしたる者、流動體は固體が其の固形の狀態を少なくしたるものに外ならず。生は伸ぶるなり、死は縮むなり。反對と見らるゝ者も畢竟程度の差別に歸するなりと。斯く連續律に從うて一切のものが連綿たる程度の差等を成し一切のモナドが皆飛躍を爲すこと無くして其の狀態を開發し行く所に某の變化推移する所以を發見するを得。物の一狀態に在るは其れが更に次ぎの