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のなるが故に如何にしても抑壓すべからざることを强ひて抑壓せむとする時に於いては却りて國家其の物の存在を危くし人民の反抗を來たすに至るべし。斯かる瘍合に於いて國家に取りて最も恐るべき敵は取りも直さず其の人民なり。此の故に宗敎上國家の命令し得ることは唯だ國家の存在に必要なる丈の外形上の禮式に止まりて宗旨上の信仰其のものを命令し左右すること能はず。信敎並びに學術の自由及びそを發表する要具なる言論の自由は國家が人民に對して十分に許さざる可からざるもの也。如何なる國家が最も安全なるといふに道理に從ひて最も善く治められ其の人民に許すに最も多くの自由を以てするもの也。斯くスピノーザの國家を論ずるや最も吾人の自由なる發達に重きを置けり。また彼れは國家の政治は人民の狀態を善くし或は惡しくすることに於いて極めて大なる閼係を有するものなりと見て以爲へらく、人民は何れの國土に於いても又何れの時代に於いても常に相同じきものにして甚だしく其の戕態を異にし來たるは偏へに其を統治する政府の所置如何によると。斯くしてスピノーザの政治論は人間の根本性たる自衞の傾向を根據とせる點に於いてホッブス風の自然論に從