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提要

《ミレートス學派所說の提要。》〔十七〕上述せる所によりて知らるゝ如く希臘哲學はもと天文物理の說と相離れたるものに非ず。後の科學の種子と見るべき種々の考究はた相混じて哲學の中にやどれりし也。(但し數學は早くより別のものとして取扱はれしが如し。)此のミレートス學派の大眼目とする所は一物素より生じたるものと見て天地の萬象を說明せむとするにあり、タレース先づ此の著眼點を代表し踵いでアナクシマンドロス幷びにアナクシメネース出でて更に之れを開發したり。タレースが物素と見たる一特殊の物(水)に代ふるにアナクシマンドロスは無際限の者即ちト、アパイロンを以てし此のト、アパイロンより反對の者分離し出づるによりて一切の個々物を生ずと說きたり。次ぎに又アナクシメネースは一物素の變化によりて如何樣にして萬物の生起するかを說き出でて之れを其の物素が厚薄を爲すの作用に歸しぬ、是れ一步を機械的說明に進めたるもの也。約言すればタレースに於いて一物素といふ思想を見、アナクシマンドロスに至りて無際限といひ又(吾人