Page:Onishihakushizenshu03.djvu/505

このページは校正済みです

に合一したる無限なり、無限なると共に有限なるものなり、神は萬物を疊めるもの(complicatio)、世界はそを開きたるもの(explicatio)なり。故に神に於いては差別と平等とは相離れたる者にあらず、凡べてを含める神(deus implicitus)是れ即ち差別雜多に開發したる神(deus explicitus)なり、即ち神は多を合する一、有限を統一する無限にして彼れは極大なると共に極小なり、これを譬ふれば猶ほ限りなき圓に於いては其の中心と周圍との一なるが如し。極大と極小とは斯くの如く一なるが故に諸物各〻それぞれの樣に於いて全界を示せるものと見るを得べし。換言すれば一切が一切の中に在り(Omnia ubique)、そは一切が神の中に在り而して神が一切の中に在ればなり。

ニコラウス自らは萬有神敎を排斥すと云ひながら、彼れの說の實際如何ほど萬有神敎的思想を含めるかは甚だ見易かるべく又此の點に於いて彼れが思想に神祕的傾向の存することは明らかなるべし。但しニコラウス以前に於いても無限てふことを以て神を說く思想はありたれども無限と有限とを以て神と萬物との關係を解釋する說は彼れに至りて一種別樣の趣を呈し來たれり。且つ又彼れが說