Page:Onishihakushizenshu03.djvu/428

このページは校正済みです

至れるものは後に述べむとする所を以て知らるゝ如く實に自然界の科學的硏究なりき。

《スコラ哲學の盛衰、其の三期、其の哲學的基礎。》〔三〕斯くスコラ哲學の目的は信仰と道理との一致を示さむとするに在るを以て宗敎上の信仰が道理に合ふことを證し得たりと考へたる時は是れ正さしくスコラ哲學の最も生氣を有したりし時にして其の兩者の必ずしも相合ふものに非ざるを認め寧ろ全く其の領域を相分かたむとしたる時は是れ即ちスコラ哲學衰頽の時代なりとす。

中世紀哲學は畧〻之れを三期に大別することを得。第一期は第九世紀より第十二世紀に至るまでにして之れを其の發生の時代と稱し得べし。第二期は第十三紀にして其の全盛の時代なり。第三期は第十四及び十五世紀にして其の衰頽の時代なり。各期の思想に於いて其の基礎となれる特殊なる哲學上の學說あり而して這般の學說は皆希臘の哲學に由來せるものなり。第一期に於ける哲學的基礎はプラトーン學風の實在論、第二期のはアリストテレース學風の實在論第三期のは唯名論なり。哲學思想の上より見れば實在論と唯名論との爭ひがスコラ哲學