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を以て希臘の美學思想の最も進步したるものといふべし。宇宙に調和秩序の存するは是れ皆ロゴス(λόγος)の現はるゝによる、現象界の美は物質を通ほしてイデアの耀く光に譬ふべきなり。

《其の道德論、解脫論。》〔九〕プローティノスの道德論は吾人が物質界に繫がれ居る樣より解脫することに其の根本思想を置けり。即ち彼れの萬有論は世界が段階を爲して神より發出することを說き、其の道德論は吾人が再び物質世界の束縛を脫し溯りて神に合一することを說けり。プローティノスに從へば、社會的關係に於ける道德は寧ろ吾人をして理想的狀態に達せしむる前階に外ならず。吾人が物界に束縛せらるゝ狀態を脫する段階は、第一に五官の知覺、次ぎに論理を以て事物の理を考ふること、又美なるものを愛する心、遂に美に發現する理想そのものを求めて形骸の束縛を離るゝに至る、是れなり。吾人は須らく情慾を去り吾人の靈をして純粹の活動を現ぜしめざる可らず。解脫は衆德の根元なり吾人は解脫しゆきて遂に我が靈の自らを直觀する所に達せざる可からず而して是れ即ちヌウスの自觀を吾人に得たる者に外ならず、何となれば我れに存するものはヌウスにして我れに於ける眞