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べきならむ。


第五期 宗敎時代

第二十章 新プラトーン學派の先驅

《宗敎的傾向の進步。》〔一〕アリストテレース以後の希臘哲學の前期は倫理の硏究を主眼とし、此の世に於いて吾人が各〻道德を修むるによりて安心立命の地を得べしと考へたりしが前にも云へるが如く各自外界を離れ獨立して我が心中に閉ぢ籠もり己れを顧みて安心の地を求めむとするにつれて古代の希臘思想の特質たりし優美なる精神上の調和を失ふに至りき。盖し心身の諸能を優美に發達せしむることは希臘人の理想にして、また彼等はそを實行し得べしと信じ、其の中に和解し難き爭ひの存することを感ぜざりき。然るに各自次第に深く我が精神的生活を顧みるに至りて益〻其の理想とする所と現實の狀態との分離を自覺し我れ自らの中に相反するもの即ち靈肉の爭ひあるを感ずるに至りぬ。換言すれば自心の中に一方には理想の高きに向かひて上らむとするものあり一方には己れを卑きに束縛する