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りて成るものなりとし、森羅萬象は本來存在する種々の力のなす所、而して其の力の中最も主なる者は寒と暖とにして殊に暖を以て活動的のものなりとせり。希臘哲學の最も古きイオニア風の思想が彼れに於いて復活せるを見るべし。この古代の物理思想の復活はアリストテレース以後の希臘哲學の一特色といふべし。廣く諸科學を硏究したるペリパテーティク學派の人々に於いてはまた局部的硏究の傾向を看る。彼等の特に長じたりしは歷史的硏究(殊に文學及び學術に關するもの)なりき。この局部的穿鑿と博覽とを求むる傾向は年をおひて益〻盛んになりしがアリストテレース以後第十一の學頭たりしアンドロニコスに至りて再び哲學の組織に著眼しアリストテレースが哲學の本意を更に硏究し復興せむとせり。彼れの編纂せしアリストテレースの著作が本となりて其の後アリストテレースの眞說を組織的に闡釋せむとすることおひ〳〵に進み來たり遂に其の學祖の哲學を註釋することを以て此の學派の主要なる職務となすに至れり。アフロディシアス人なるアレクサンドロス(紀元後二百年頃の人)の如きは註釋家として最も有名なる者也。