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《美術論、美術の三要素。》〔三三〕美術論 古代に在りて最も豐富なる美術論を爲しゝものはアリストテレースなり。但し彼れの論は未だ近世の所謂美學を成せりと云ふべからず寧ろ專ら美術の論なり。

彼れは先づ美術上美と見るべきものの堺限を定めて曰ふ、第一、其の大いさの適當なるを要す、大に過ぎ小に過ぐ二つながら美なるものの範圍の外に在り、次ぎに一の個體を成して定限を具ふるを要す區域の漠然たるものは美と云ふべからず、次ぎに又個々の部分が相關聯して統一あるを要す關係なきものを挿入するは美術たるを害す、換言すれば釣合、調和、比例等のよく保持せらるゝを要す。以上の三要素は是れ實に希臘美術の特色を言表せるものなり。

《美術は摸倣の性に起こる。》〔三四〕アリストテレースおもへらく美術は吾人が摸倣の性に起これりと。吾人には元來摸倣の性あり。故に摸倣する事を喜ぶと共に摸倣したる物を見ることを喜ぶ。實物の人目を喜ばしめざる者も其の摸倣せられて繪畫彫刻となるやよくこれを喜ばしむ。而して摸擬の方法はまた一ならざるを以て其の方法の異なるに從ひて數種の美術を生ず。形體を以て摸倣するは彫刻なり、彩色を以てす