Page:Onishihakushizenshu03.djvu/288

このページは校正済みです

論理學

《アリストテレースの論理學。》〔六〕ソフィスト、ソークラテース及びプラトーンに於いて多少其の萌芽を現はしたるのみなる論理の硏究はアリストテレースに到りて始めて一特殊の學科として組織せられ後世久しき間彼れが所造に論理學の模範を仰ぐこととなれり。此の彼れが偉大なる所造に於いて希臘學術の硏究は其の明瞭なる自意識に達したりと謂ひて可なるべし。盖しアリストテレースの論理學は凡そ學術の硏究に用ゐるべき方法を論ずるものにして一切哲學の攷究に入らむには先づ最初に究明すべきもの、又學術硏究の機關として用ゐるべきものなれば決して智識論と相離れたるものにあらず。後世の所謂形式的論理學は其の淵源をアリストテレースの所說に發したるものなれども、彼れが論理學全體の趣意とする所を以て單に形式的論理學に說く所の如きものと思ふべからず、其の趣意は彼れが眼中に置ける學術硏究の目的と相離れざるものなれば、亦おのづから彼れが哲學全體の意見と相關はる所あり。論理學の所定に從うて種々の事物を硏究するもの是れ諸種