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にあらざるが如し)、解釋論(περὶ ἑρμηνείας これは命題を論じたるものなるが或史家は其のアリストテレースの自作なることを疑へり)、アナリュイティカ前書(ἀναλυτικα προτέρα これは所謂三段論法の論なり)、アナリュイティカ後書(ἀναλυτικα ὑστέρα これは證明法の論)、トピカ(τοπικά これは盖然的論證の法を說けるもの)、ソフィスト駁論法(περὶ σοφιστικων ἔλεγχων これはソフィスト風の駁論を檢査して其の似而非推論なることを明らかにしたるもの)、以上をアリストテレースの論理上の著作とす、後世これ等を合してオルガノン(機關 όργανον)と稱す盖し學術硏究の方法を論ずるものなれば也。

アリストテレースは純理哲學(又は理體論、又は形而上學)即ち一切の實在物の原理を論ずるものを「第一哲學」(πρώτη φιλοσοφία)と名づけたり。今現存するメタフィジカは恐らくはアリストテレースの死後其の遺稿の「第一哲學」に關するものを集めて成れるものならむ今現存するところ十四卷あれど其の或部分にはアリストテレースの筆に成れりと思はれざるものも混入せりメタフィジカと云ふ語夙くより形而上學と云ふ意味に用ゐらるゝこととなりしが其の名稱の起原はロードス人アンドロニーコスがアリストテレースの著作を蒐集するに方たりアリストテレースが