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と見たり。以上はプラトーン學の大體の趣向なり。
《ディアレクティックと槪念の組織。》〔六〕請ふ先づディアレクティックより述べむ。プラトーンが知識論の主眼はプロータゴラスに對してソークラテースの所謂槪念的知識の有り得べく又達し得べきものなることを說かむとするに在り。之れを說かむとしたる究極の根據はもとより其の師に於けると同じく倫理道德上の要求に在り。而して其の要求に應ずる眞知識を秩序的に形づくる方法是れ即ち彼れが所謂ディアレクティック(διαλεκτική μέθοδος)にして語を換ふれば事物の遍通不易なる眞相を看取して槪念を形づくる方法これなり。其の方法としてプラトーンはソークラテースの旣に用ゐたりし歸納的硏究法(即ち個々の事物を蒐集比較して其の眞性を看取する槪念を形づくること)に加へて更にまた已に得たる槪念を確むる方法をも說けり即ち得たる槪念より出で來たるべき事柄を論じ出だしそを已に確實として知られたる事柄と照らし合はせ兩者の相合するによりて更に其の槪念を確むること是れなり。前なるは個々の事物より槪念へ上る方ともいふべく後なるは槪念より個々の事物へ下る方ともいふべし。要するに是れ各種類の事物につき各種の槪念を形づ