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り。有は多なるか。多は一の多く集まりてなれるものなれば一なくば多もあるまじ。然らば在るものは有にあらずして非有なりといはむか。非有は有にあらざるものなれば無きものなり、然るに又そは非有にてあるが故に在るものといはざるを得ず、即ちあらざると同時にある也、故に非有は自ら矛盾するものなり。然らば在る物は有なると共に非有なるか。されど有と非有とは相合ふ可からず。此の故に何物もあるなし。
(第二)縱令物ありとも之れを知る能はず。そは在る物と吾人の思想とは別物なればなり。若し別物にあらずとせば吾人の思想に誤謬あるべき理なし、すなはち吾人の考へたるものは悉く皆實在と契合すべき筈なり。此の故に物と相異なる吾人の思想を以て其の物の知られむやうなし。
(第三)縱令物を知り得たりとも其の知識を他人に傳ふる能はず。そは之れを傳へむには言語等の外面の符徵を假らざるべからず。然るに符徵と知識せる事柄とは別物なり。又他人が件の符徵を會得するところが眞に能く我が傳へむと欲するものと符合することを保證す可からず、我が心の知識を取つて他人の心に移さ