Page:Onishihakushizenshu03.djvu/183

このページは校正済みです

其の根本思想は旣に彼れに先きだちてロイキッポスの唱へ出でたる所にして彼れの功は專ら之れを開發應用するにありしが如し。但だ感覺の論に於いて彼れはプロータゴラスの主觀說を便として之れを利用したるなり。且つ又其の說く所は諸般の學科に涉りて稀有の博識を現はしたりしには相違なけれど是れ亦以て彼れを物界硏究時代の學者と相分かつには足らざるべし。時代よりいへばソークラテース以前の人とは謂ふべからざれども,こゝに彼れを第一期の哲學者に列するは時代を以てせずして其の學脈を以てすと心得なば毫も不可なる所なかるべし。


第二期 人事硏究時代

第十一章 ソフィスト

《希臘に於ける啓蒙時代とソフィスト。》〔一〕西曆紀元前第七世紀より第六世紀へかけて希臘に於ける智識上の進步とこれに伴へる宗敎道德上の搖動とがミレートス學派及びピタゴラス盟社等によりて代表せられしことは前に述べし所の如くなるが、さて其の進步搖動のますま