Page:Onishihakushizenshu03.djvu/149

このページは校正済みです

憎を語り、ロイキッポス(後に出づ)は元子と虛空とを相對せしめたり。是れ皆對峙のものを以て森羅萬象の生起を說明せむとしたるもの也。

ピタゴラス派の學說は前にも云へる如く一人の造れる所にあらず又一時に成れるものにあらず、其の學徒間に漸次に形成せられしものなるべし。かるが故に其の所說は恰も關係なき部分を綴り合はせたらむが如き趣あり。其の數論、其の天文の說及び其の宗敎上の所說は相聯絡せるものにあらず。を以て諸數の、又隨うて諸物の根元とする數論と、中央火を說く宇宙構造論と、善惡應報輪廻轉生を說く一神敎的信仰は相互に自然の關係を以て繫がれたるものにあらず。

斯くの如く此の派の學說は個々獨立せる部分の集合せるが如きものにして頗る散漫の嫌ひあるを免れざると共に又哲學上の說としても此の派に特殊なる數論に於いて彼れ此れ相合はざる點あるを見る。盖し諸數の本原なるを以て奇偶兩數の對峙をその未だ相分かれざる狀態に於いて包合するものとなし奇數と偶數は此れより生じ出でたるやう說きながら又を以て不定に對するものとなし能定のが其の働きを不定に及ぼすにより有形の萬物を生成すと說くは