蚤
私の休息の場所が、
君には仕事の場所だ。
(この天の配剤を私は好まない)
私が枕に頤(あご)をのせたとたん、
君は仕事に出かけてきた。
だが、開いた書物にのったのが、
拙(つたな)い運󠄁の尽きだった。
私は机のかどへ持っていって、
とどめをさす。
ときに、君の死にざまほど、
気味のよいものがまたとあろうか。
ヴァイオリンの絃が切れるときの音――
そして君は、この世に何の未練もなく
一瞬にして空(くう)に帰す。