大 古(むかし)
むかしむかしの
おほむかし
人が跣足で
ゐたむかし
森の上には
日がひかり
山の上には
曠野の上には
川の上には
〈無題〉 『月󠄁の出る頃あ』
月󠄁の出る頃あ
あつちこつちが匂つた
草堆のまわりぢや
乾草が匂つた
裏木戶のあたりぢや
のばらが匂つた
納󠄁屋の窓からは
林檎酒が匂つた
森の向うぢや
夜鶯(ナイチンゲール)が鳴いた。