このページは検証済みです
汽車〈B〉
北國から來た汽車が
私達󠄁の町に
とまつた
くさりのやうに
長い貨󠄁車で
皮をひつぺがした材木と
五十サ〔ママ〕ンチの白雪󠄁をのせて
淸烈な木の香が
はなをつき
一陣の冷氣が
肌にしみた
私達󠄁は頭をあげて
雪󠄁の降りつむ山を思ひ
木のぶちきられる
音󠄁をきいた
耳をつんざく汽笛を
鳴らし、
はげしいシビラントで
蒸氣を吐きちらすのは
ここのなまぬるいヴアルガリテイを
よし汽車よ
その氣慨の白雪󠄁をたもち
その怒恚のシビラントをつづけ
その情󠄁熱の木の香をふらしつつ
更に南へ南へ
疲れた山野をつつきつてゆけ
