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誰か小川に

花󠄁 ながす


無題『石よ』


石よ

お前󠄁は昨日まで

水上にゐた


夏はかじかを

きゝ、

秋は鮎が明󠄁るい水と

お前󠄁のすそを

落ちてゆき、

冬は枯松葉が

ふりかゝり、

淸冽な水のひゞきは

一日もお前󠄁の周圍にやまなかつた


だが石よ

お前󠄁は梃子でうごかされ

牛車にのせられ、

昨日、遠󠄁いこの町に

はこばれて來た

お前󠄁は庭の一隅、

吳 竹の中に据えられた

お前󠄁の周圍にもはや

あの滴瀝てきれきの聲はひゞかぬ


石よ

水上にゐた石よ、

人の兒が

夜となれば

妖しく美しき

花󠄁火をともさうを