宿
若竹の 藪をまはると
ほら 見えて來た
この細い道󠄁に面した
小さい窓
鐡の格子に
擦硝󠄁子の窓障子
季節をすぎた匂ひすみれの
鉢もある
ほら ここだ 僕の栖は
ほら ここだ 夜と、苦しみの
栖は
出來ることなら
知らない旅人のやうに僕は
ここをすぎてゆきたいのだ
何處か 遠󠄁くの
新しいくにへゆきたいのだ