花󠄁火
わたしはこつそり宿を
ぬけでる
祕密な喜びを持ちだす
子供のやうに
つゆばれの日曜󠄁のまひる
塀には麥が立てかけられ
南天の花󠄁が日かげにこぼれる
人のゐない小徑を通󠄁り
川つぷちに出る
さておもむろにとり出した
一束の線香花󠄁火