宿をいでて
宿をいでてちまたをゆけば
人らおのもおのも營みあり
或(あ)るは洋服󠄁屋をいとなみ
或るは靑物をひさぎ
或るはまたむきみやの如きものとなれり
あかあかと灯をかゝげ
妻にかしづかれ
子を抱󠄁きて飯をはまば
心いかばかり樂しかるらん
われにもまた
貧󠄁しとはいへ一つの營みを
美しからずとはいへ優しき妻を
愚なりとはいへ