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雨後卽興
よべあがりたる雨は
麥のみどりを洗ひ
菜󠄁の花󠄁の黃を洗ひ
葱の匂ひをあらひ
空󠄁氣をあらひ
感覺をあらひ
神經をあらひ
をんなの俤の髮をあらひ
すべて洗ひきよめ
われ土をふんで立てば
戀しさまた新たなり
心うつろなるときのうた
しやくやくの
朱き芽は
すぼめたる掌に似たれば
その掌の中にやどる雨滴󠄂よ
大つぶの雨滴󠄂の
うちらには
ぎらりと光る銀色ありて
心うつろなるに
とげのごと
さしにけり
さしにけり