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馬鹿な奴は澤山ある。

西行、良寬、芭蕉、皆然りだ。

ミレーも然り、コローもさうだ。

彼等は皆

藝術󠄁に夢中となつて、

西行、芭蕉は寂しい路を辿り、

良寬は世の人の嘲罵の的󠄁となり、

ミレー、コローは

自分の身を惡い境遇󠄁に置いた。


併し!

彼等には藝術󠄁と云ふものがあった。

忘れられない藝術󠄁があつたのだ。

それで彼等は自分の身を

尠しも顧󠄁みなかつたのだ。

藝術󠄁は

それ程󠄁價値のあるものだらうか。


藝術󠄁が好いものか、惡いものか、

そんな事は知らない。

いや、俺は考へない。

只、俺は、

天地の間から詩趣を見出せば好い。

そんなに俺は馬鹿げた男なのだ。


夕方河原


夕方河原は

さみしいな


ゆらゆら芒の穂の先に

かゝるお月󠄁さま

さみしいな


誰が棄てたかちひ猫の

まゝよとないて

さみしいな


遠󠄁ほい砂をとぼとぼと

通󠄁る

さみしいな


さう言ふ私の足元の

なあがい影も

さみしいな


ほんとに河原は

さみしいな

夕方河原は

さみしいな