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喧嘩に負󠄂けて


喧嘩に負󠄂けてとぼ

歸る悲しい砂の丘――

怒つた後の淋しさは

長があい細い影までが

しく泣いてゐるような


あいつの怒ったあの顏が

目先にちら浮いて出て

あいつにはられた兩頰が

冷たい風にちか


あいつがあいつが惡いのだ――

とぼ歸る夕空を

小鳥が一羽ちい

淋しい悲しい啼󠄁聲で


喧嘩に負󠄂けてとぼ

歸る悲しい砂の丘――

怒つた後の淋しさは

長があい細い影までが

しく泣いてゐる様な


詩人


闇黑の中に

一點の光を見つけると、

その中から

何か詩趣を見出さなければ

おかない俺だ。


俺は

一介の儚い詩人なのだ。


俺は只、

太陽と地球の間に

生滅する事實を

紙の上に書き連󠄁ねている

馬鹿な男なのだ。