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父󠄁


わが父󠄁は われを棄てしをみなが

嫁ぎゆく地主の家の

疊縫󠄁ひたまふ

なりはいなれば 寒󠄁き夜を

ともしびかゝげ

力をこめて ひたに

縫󠄁ひたまふ

わが子は貧󠄁しきが故に

見棄てられしと思はば

父󠄁の口惜しさいかばかりならむ

されど父󠄁よ

人な恨みそ

まことはわれのかのをみなを

愛すること少なかりし故ならむ

げに父󠄁よ

心して縫󠄁ひたまへかし

その靑き疊の上に

春立ちかへるころいとなまれん かの

をみなとかれが夫の生活に

よき日はあれとりつつ。